重森 三明
SHIGEMORI Mitsuaki
三河湾の絶景を借景に、抽象的な水墨画作品郡を窓際に展示し、新たな借景庭園をこころみます。日本には既存の山々などの背景を生かした名園が数多くあります。このプロジェクトは蒲郡の発展の基礎でもある竹島をはじめ、十五の島々を庭園の石組に見立て、それらに呼応するようなかたちで現代建築内にもう一つの庭園を出現させます。
日本庭園では石組の配置に七五三を応用します。枯山水で有名な京都の竜安寺石庭には十五個の石が使われています。今回の展示では木の額装の水墨画を15点を七五三に分けて、一見、ミニマル・アートのように展示しました。(水墨画の作画には温泉水を使用、額サイズ1点あたり:22×27cm)。その他、水墨画の作画過程の細部を超拡大撮影した写真をテーブル上にしています。
通常、紙に描かれた書画等は日の光によわく、直射日光を避けて展示されますが、今回はこの状況を逆に利用します。展示期間中に浴びた日の光の痕跡を作品に刻印します。描き終えた水墨画の何点かを選び、余白の部分に円状の紙等を貼ります。約1カ月のあいだ、天候にかかわらず太陽の光は作品に到達し、日焼けの跡を残します。後日、円状の紙等をはがした場所は、周辺より少しだけ日焼けせず、白くなります。今後、年月を経て、作品が古くなっていくたびに、丸い日焼けの跡は、水墨画の中に描かれた太陽や月を連想させてくれることでしょう。一旦できあがったアート作品は、日の光、海からの反射光、或いは月の光によって熟成され、ととのえられます。できれば竹島の姫神(弁財天)のお力もいただければ幸いです。
- Artist
- 重森 三明
- 美術家、重森三玲庭園美術館館長。京都市在住。
京都芸術短期大学専攻科修了。パリ国立高等美術学校卒業。
2000-01年、祖父である重森三玲の旧邸の保存にむけて、アート・プロジェクトを展開。海外のキュレイター達と企画し、ガブリエル・オロスコやダン・グレアムなど国際的に活躍する作家を招聘した。2006年、三玲旧邸の書院庭園部を重森三玲庭園美術館として再生、館長に就任。著書に、『重森三玲 Ⅱ 自然の石に永遠の生命と美を贈る』(文・写真、京都通信社)、『京の坪庭を楽しむ』(共著、平凡社)など。現在、美術館の運営の傍ら自身のアート作品を制作、研究を続ける。
京都芸術短期大学専攻科修了(1988)
パリ国立高等美術学校卒業(1993)
個展
1999年 「モナドプロジェクト」 京都市四条ギャラリー
※関西の主要な美術館の学芸員が審査する全国公募の展覧会コンペで1等(1999公募四条ギャラリー/京都市主催/審査員 尾崎信一郎・京都国立近代美術館研究員)
2020年 重森三明の作品展示 重森三玲庭園美術館
2021年 重森三明の作品展示02 重森三玲庭園美術館
グループ展
2006年 「抽象再訪」 京都芸術センター
※京都芸術センター主催、美術評論家・キュレイターの森口まどか氏が企画した展覧会。
他に岡田利規(チェルフィッチュ)、小山田徹、森口邦彦、八木明などが参加。